2014年03月17日

House of Cards

J.YOSHIDA CLINICの吉田です。

一連のSTAP騒動、とうとう著者の博士論文撤回という事態にまで進展…というか、後退してしまいました。STAP現象という夢のある発見に(そしてその発見者に)心躍らせていた身としては、あまりにやるせない気分です。

今や、科学というものに対する彼女の「姿勢」や「行為」を示す内容の記事がネット上に溢れています。それが事実であれば(恐らく事実なのでしょうが)、ただもう唖然として驚くばかりなのですが、とにかく今は、研究者としての資質や能力云々という話と、STAP現象の真偽については、後者の是非がはっきりするまでは分けて考えたいと思っています。

今回の騒動は、論文の写真やデータにおかしな点が多数認められたことに端を発していますが、最近よく話題に上がっている「TCR再構成」とSTAP現象との関連について、気になって少々調べてみましたので、私なりに解釈したことをなるべく簡単に説明してみます。(ただ、私はこの分野の研究者ではないので、間違っていたらすみません…)

まず、登場する細胞として、CD45陽性細胞(リンパ球、好酸球、単球など、いわゆる白血球ファミリーに属する数種類の細胞達のこと)、STAP細胞、STAP幹細胞の3種類があります。

今回のSTAP現象の論文は、
1)白血球細胞という分化してしまった細胞から、酸刺激でSTAP細胞という多能性(いろいろな細胞に分化できる性質)を有する細胞に変化させることができた。
2)STAP細胞はほとんど増殖能力がないが、特定の培養条件で培養すると、多能性+増殖能力を有するSTAP幹細胞になった。
ということを(ざっくりで申し訳ありませんが)言っているようです。

ここで、本当に白血球ファミリーの細胞から多能性のSTAP細胞が生じたのか?を証明するために、「TCR(T細胞レセプター遺伝子)再構成」という、特定の遺伝子に見られる変化を利用しています。TCR再構成についてわかりやすく話せと言われると、私の知識では間違いなくしどろもどろになりますので(笑)、まあ言わばT細胞(白血球ファミリーの中のリンパ球の一種)である証し=身分証みたいなものだと思ってください。

で、STAP細胞集団をすりつぶして、この身分証を拡大鏡で探してみたら、確かにあった。だから、少なくともT細胞はSTAP細胞になってるよ、ということなのですが、ここで一点大事なことがあります。

STAP細胞というのはCD45陽性細胞、つまり、リンパ球だけでなく、好酸球、単球、好塩基球、好中球といった様々な白血球がごちゃ混ぜになっている多国籍軍が変化したものだと考えられますが、変化したことが証明されているのは身分証を持つT細胞だけで、身分証を持たない白血球、すなわちB細胞、好酸球、単球(以下略)がSTAP細胞に「なった」という証拠もなければ、逆に「なっていない」という証拠もありません。

そして、(恐らくそうだと思うのですが)問題となっているのが、STAP細胞からSTAP幹細胞に変化させた際に、STAP幹細胞ではこの身分証が見当たらなかった、ということのようです。まあ、STAP細胞が全てT細胞由来のものではないので、身分証を持たないSTAP幹細胞があっても矛盾はないように思いますが、それとは別の次元で、STAPとは無関係な学位論文からの写真の流用が発覚したり、データの取り扱いに関する問題が指摘されて、一気に疑惑が拡大してしまい、結局「未熟な」論文内容(つまりSTAP現象)そのものの信憑性すらも…といったところではないでしょうか。

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信憑性と言えば、つい先日も、「STAP細胞というのは、(同じ研究室内で培養していた)普通の胚性幹細胞が(間違って、もしくは意図的に)混入したもの…という可能性も否定できないのでは?」という内容の論説を読みました。もしそうであれば本当に寂しい限りです。

いずれにせよ、理研が再度検証するようですので、黙って結果を待ちたいと思います。

私は2ヵ月ほど前にSTAP現象の発見を喜ぶ記事を書いているので、今回は一連の騒動を経た現在の私の気持ちを、最後に書いておきます。

まず、STAP現象がきちんと証明し直され、改めて論文を世に出して欲しいということ、そして、理研に限らず日本の研究機関には、粉飾することなく、淡々と事実を積み重ねるような、地に足の着いた研究と研究者を輩出していただきたいということ、この2つの単純かつ当たり前のことを、日本の再生医療の未来のために心底願ってやみません。

ジェイヨシダクリニック
https://www.j-yoshida.jp/
posted by J.YOSHIDA at 04:49| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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