2013年11月24日

細胞の老化(その2)

おはようございます。
J.YOSHIDA CLINICの吉田です。
今回は細胞の老化の2回目です。

前回、再生系細胞(分裂する細胞)では、二度と分裂できなくなった状態のものを老化細胞と呼び、分裂できなくなる理由として、DNAの損傷(部分的な破壊や異常の発生)や分裂寿命(分裂できる回数の限界)がある、という話をしましたが、細胞老化の意義についてもう少し詳しく(一応、分かり易いように心掛けて)お話します。

DNAを破壊する、あるいはDNAに異常を生じさせるものとして、
・紫外線
・放射線
・化学物質
といった体外から作用する要因があります。
また、体内で自然に発生しているような、
・活性酸素
・体温程度の温度(何と体温でも壊れます!)
・細胞分裂時のDNAの読み取りエラー(1つの細胞がもう1つ細胞を作るために、DNAの複製品を作る必要がありますが、その際に全く同じものができずに一部ミスが生じてしまうということです)
といったものもあります。

これらの要因によって、たった1つの細胞だけで1日に最大50万回程度の損傷が起きていて、細胞はそれらを逐一修復しながら生き続けているのです。もし、DNAの細胞分裂をコントロールする部分に異常が生じた場合、その細胞は無秩序・無制限に分裂を繰り返す癌細胞になってしまう可能性がありますが、人間の細胞はDNAの修復能力が非常に高いため、他の動物に比較して細胞の癌化は非常に起こりにくいと言われています。

しかしながら、あまりに損傷が多発して修復が追いつかなかったり、長い年月の間に修復不能な損傷が蓄積してきた場合、つまり不良DNAを抱えてしまった細胞は、次の2つの運命のいずれかを選択しなければならなくなります。1つはこれ以上の分裂を止めて不良DNA(を持つ細胞)を増やさないようにする、もう1つは自ら死を選んで体内から消滅する、という道です。前者が細胞老化、後者はアポトーシスと呼ばれる反応です。

岐路.jpg


この反応によって、不良DNAから発生する癌化を未然に防ぐ仕組みになっているわけですが、中にはこのどちらからもドロップアウトして癌化してしまう細胞も存在します。しかし、我々人間は非常に優秀な免疫細胞の働き(免疫機能)によって、ほとんど全ての癌細胞は生まれてもすぐに退治されてしまうため、やはり癌の発生は非常に低く抑えられています。

一方の分裂寿命は、DNAの両端(動物のDNAは2本のヒモをねじった撚り糸のような構造をしています)のテロメアDNAと呼ばれる部分の短縮や損傷と深い関係があります。簡単に言うと、このテロメアDNAはDNA全体を保護するような働きがあるのですが、細胞が1回分裂をする(DNAの複製をする)ごとに、このテロメアDNAが少しずつ短くなっていき、もうそれ以上短くなるとDNAを安全に保てない、という状態になったときに分裂できなくなる仕組みになっています。

人間の線維芽細胞の分裂可能回数(分裂寿命)は、だいたい50から60回程度と言われており、年齢とともに老化細胞の数が増加します。しかも、テロメアDNAはれっきとしたDNAですので、そこに先程述べたような損傷が生じれば、残された分裂可能回数がさらに減ってしまいます。つまり、紫外線や活性酸素によるダメージが多ければ細胞の分裂寿命が短くなり、それだけ細胞の老化も早まるということになります。紫外線やタバコが肌の老化を早めるのはこういった理由です。

これは私の推測ですが、この地球上では人間の線維芽細胞は何回くらい分裂した頃にDNAの限界が来るのか?といった問いに対して、長い進化の過程の中で得られた答えが50から60回だったのだと思います。あらかじめそのくらいの回数で分裂できなくなるようにしておけば、命を脅かす癌の発生率を抑えることができます。当然、紫外線や活性酸素が作用する環境下ではDNAの傷みも早いので、もっと短い回数で分裂不能となるようセットされているのでしょう。

このように細胞の老化というのは、DNAの劣化が進んだ細胞=癌化しそうな細胞を、癌細胞になる前に未然に封じ込めることが目的の一種の防御システムだと考えられます。我々人間の平均寿命が動物の中でも非常に長いのは、実はこの巧妙な細胞老化のしくみが大きな要因となっているわけです。

とは言っても、老化細胞が増えれば身体や肌の衰えが進むことになりますので、アンチエイジングが気になる方にとってはちょっと迷惑な諸刃の剣といったところでしょうか。

ジェイヨシダクリニック
https://www.j-yoshida.jp/
posted by J.YOSHIDA at 04:17| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月11日

細胞の老化(その1)

おはようございます。
J.YOSHIDA CLINICの吉田です。

今回はいきなり細胞の写真から始めます。
この2枚の写真の細胞を比較して、どこが異なっているのかを良くご覧になってからお読みください。

ちなみに、各細胞の中にうっすらと見える楕円〜円形の構造物は、DNA(遺伝子)=あらゆる蛋白質の設計図を格納している「核」です。

391px-SABG_MEFs.jpg


どうですか?いくつか明らかな違いがありますね。

まず、上の細胞は小さくコンパクトで、ある程度方向性がありますが、下の細胞は大きく広がっていて、特に方向性はありません。
よく見ると、上の細胞は濃淡があり、厚みのあるところが濃くなっていますが、下の細胞は全体的に淡く、のっぺりと薄いことがわかります。
あと、下の細胞は胞体(核以外の部分)が何やら緑色に染まっています。

実はこれらの細胞は、どちらも胎児マウスの線維芽細胞で、上の細胞は若く元気な細胞、下の細胞は衰えた老化細胞なのです。緑色の部分は、老化細胞に見られる「細胞老化関連ベータガラクトシダーゼ」という酵素が染まったものです。
人間の真皮を作っている線維芽細胞でも、これと全く同じ変化が見られます。

少し話が逸れますが、身体を構成している細胞は、分裂して数を増やせる再生系細胞と、分裂する能力を持たない非再生系細胞の2つに大別できます。線維芽細胞は再生系細胞に属しますが、再生系細胞における老化細胞というのは、簡単に言うと、それ以上分裂できなくなった細胞のことを指します。

さて、分裂できなくなる理由として、
1)種々の要因によるDNAの著しい損傷(要因として熱、活性酸素、紫外線、化学物質等がある)
2)分裂寿命(DNAの構造上、分裂可能な回数がおおよそ決まっている)
があります。

マウスの線維芽細胞を培養した際に見られる老化は、1)の活性酸素による影響が大きいと考えられるのですが、人間の線維芽細胞の培養で見られる老化は、2)の分裂寿命によるものがメインとなります。

つまり、元気な細胞を増殖させれば、同じような元気な細胞が2倍4倍に増える…のではなく、少し老化細胞に近づいた細胞が2倍、さらにまた少し老化細胞に近づいた細胞が4倍になるということなのです。

当クリニックでは、こういった分裂寿命や細胞の老化を考慮した治療を行っていますが、ちゃんとした、実用に堪える細胞を得るためには、細胞老化とのバランスを考えながら培養をしなければならない…という難しさがあるということをご理解いただければ幸いです。

次回は老化細胞についてもう少し詳しくお話しします。

ジェイヨシダクリニック
https://www.j-yoshida.jp/

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Summary of images:
Description = Microscopic image of senescence on mouse embryonic fibroblast cells. (SABG assay. 100-fold magnification.)
Source = http://ja.wikipedia.org/wiki/ファイル:SABG_MEFs.jpg
Date = 2007/4/3
Author = Y tambe
License = GFDL(http://www.gnu.org/licenses/fdl.html

posted by J.YOSHIDA at 05:04| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月01日

入口の絵

こんばんは、J.YOSHIDA CLINICの吉田です。

クリニックをオープンしてはや2ヵ月が経とうとしています。
先週は案内板が設置されたことをお伝えしましたが、今回はクリニック入口の絵に関する記事を少々。

もともとこの入口に立ちはだかる白い壁は、クリニックの半分を占める培養室の壁で、クリニックの入口としてはどうなの?という気がしないでもなかったのですが、培養室に必要な面積やクリニック内の導線を考えると、どうしてもこのレイアウトしかありませんでした。
さて、この殺風景な入口をどうしたら良いだろうか…?

2013-09-03 19.54.00.jpg


そうだ、絵があるじゃないか!絵を飾ろう!!
というわけで、今の入口です。

2013-10-27 12.36.26.jpg


実はこの絵、私の皮膚科時代の同級生のドクターからの開院祝いなのです。彼がいなければ今の私もクリニックも無い、と断言できるほどお世話になっているドクターで、ある意味師匠であると同時に良き友人でもあります。今は新宿区にある皮膚科クリニックの院長として大変忙しい毎日を送っています。
今回もお陰さまで、クリニックの入口を入口らしくすることができました。本当に何から何までお世話になりっぱなしで心から感謝です。

2013-10-27 12.35.48.jpg


ちなみにこの絵は、今井幸子さんという作家さんのリトグラフで、友人ドクターのクリニックと自宅にも彼女の作品が置いてあるそうです。当クリニックの雰囲気にとても合っていると思いますが、皆さんいかがでしょうか?

こうしてブログを書いていると、良い友人達に恵まれているなあということを、しみじみと実感するハロウィンの夜なのでした(もう日付が変わっちゃいましたが…)。

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ジェイヨシダクリニック
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posted by J.YOSHIDA at 01:19| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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